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相続放棄と遺産分割協議
不動産の相続相談2021年03月27日相続の仕事をしていて誤解が多いと感じるのは「相続放棄」です。この言葉の思い違いがのちに大変な事態を招くことがありますので注意が必要です。
よく相談者や依頼者から「相続放棄をした」「財産放棄をした」と聞くことがあります。よくよく話を聞いてみると、例えば実家をついでいる兄から「放棄してくれ」と言われて書類に実印を押して印鑑証明書を渡した、という場合です。
これは、法的には遺産分割協議という手続きです。法的な相続放棄とは、相続があったことを知ってから3ケ月以内に家庭裁判所に申述(申立)することによって行うものです。
上記の遺産分割協議と相続放棄は、特定の相続人が土地建物や預貯金などの遺産を引き継がないという点では共通しています。
しかし、違いが出るのは、債務(借金や保証人の立場など)の取り扱いです。亡くなった方に借金があった場合、相続人の間で「借金は〇〇が相続する」と決めても(遺産分割協議しても)、銀行等の貸主には主張することができません。プラスの財産を相続しなくても、法定相続分に応じて借金を負担しなければならない立場におかれます。
プラスの財産を引き継がずマイナスの財産も引き継ぎたくない場合には、遺産分割協議ではなくて相続放棄の手続きをすべきです。
私の知り合いにも、この違いを認識していなかったばかりに借金を相続することになった人がいました。
なお、相続放棄ができる3ケ月の期間内でも、亡くなった方の財産を「処分」してしまうと相続放棄できなくなってしまいます。
また、相続開始後数年たって発覚した借金を背負う場合もあります。
家族・親戚に相続が起こった場合には、相続放棄を念頭に置いて慎重に検討することをお勧めします。
田 中 裕 志
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